6月26日に日本でも公開され話題となっている、メル・ギブソン監督の映画『ハクソー・リッジ』。日米両軍で多数の犠牲者を出した、沖縄県浦添市にある前田高地とハクソー・リッジに足を運んでみました。
映画『ハクソー・リッジ』の舞台・前田高地とは
2017年第89回アカデミー賞において、5部門ノミネートされ、録音賞と編集賞を受賞した、映画『ハクソー・リッジ』。
まずは、映画を見る前に、映画の舞台となった浦添市にある前田高地の今の姿をみてみましょう。
今の前田高地は、基地と人と自然が同居する街
浦添市は、那覇市と宜野湾市に隣接する、緑と住宅が密集する街です。
もともと、「津々浦々を支配する」という意味がある「浦襲い(うらおそい)」という言葉が語源となって地名がつけられた浦添市です。
市内は、閑静な住宅街が密集するエリアがいくつもある、地元でも人気の街です。
でも、少し高台に移動し、周りを見渡せば、米軍基地が見えます。日中も、注意して空を見ていれば、爆音とともにオスプレイが飛行しているのを見ることもあります。
そんな浦添市の中心部にある、小高い山に囲まれた地域を、「前田高地」といいます。
ハクソー・リッジは初期の琉球王の墓がある浦添城跡にある
地元では、映画『ハクソー・リッジ』が公開されるまで、舞台となった前田高地は「琉球王国色の王様のお墓がある場所」としてしか、あまり知られていません。
ですから地元ではこの場所は、「ハクソー・リッジの場所」というよりも、浦添グスク(城)にある、英祖王と呼ばれる琉球王国初期の王様のお墓「浦添ようどれ」としての知名度の方が高い場所でした。
その為、あの映画が公開される前のこの場所は、祈りの場として訪れる人の方が多かったような気がします。ハクソー・リッジに行ってみる
ハクソー・リッジは、英祖王の墓から、崖の真横を通る細い通路を縫うように歩き…
急な石の斜面の上に設置された階段を上り…
しばらく、そのまま坂を上りながら上へと坂道を登っていくと、突然、柵に囲まれた場所に出てきます。
そこは、この場所で行われた激戦の跡を知ることができる、前田高地濠群でした。
策の中には、70年余りの時の流れによって、入口の外にまで草木が生い茂るようになってしまった、当時の濠があります。
そのまま歩き続けること、5分。突然、開けた場所が出てきます。
見晴らしの良い展望台のような場所があるため、その近くまでやってくると…。
私が立っていたその場所こそが、映画『ハクソー・リッジ』の舞台となったその場所でした。
ただ、その場にいる時は、ハクソー・リッジが「のこぎりのように切り立った岩」ということがよくわかりません。
もしも映画が公開されず、しかも、この看板が立っていなければ、たとえ訪れたとしても、この場所で映画のような悲惨な戦闘が行われたということは、きっと誰もが想像つかないはずです。
ハクソー・リッジからは、豊かな自然が残る住宅街の様子が見えます。
今、ここに立つと、いつもと変わらぬ毎日が過ぎ、人々の笑顔と笑い声があるとしか思えないほどの、平凡な風景が広がっています。
でも、この場所は、確かに映画『ハクソー・リッジ』の舞台となった、前田高地なのです。
今だからこそ改めて訪れたい、ハクソー・リッジの舞台「前田高地」
映画を見て、戦争や平和についてどのように考えるのかは、もしかしたら、人それぞれ違うかもしれません。国籍が違えば、映画を見た後の印象も違うはずです。
ですが、ここは、日米両軍が直接ぶつかり、両軍ともに多くの犠牲者を出した戦場です。
「どんなことを戦争というのか」
このことについて、あなたなりに考えることができる場所。それが、前田高地にある今のハクソー・リッジなのかもしれません。