甲子園愛が以上に強い沖縄県民にとって、夏の全国高校野球は、その夏一番の盛り上がりを見せる日。6月17日に始まった県大会から沖縄の夏は始まり、全国大会の結果とともに終わる。そんな沖縄の2017年の一コマだ。
沖縄代表の試合当日、そして誰もいなくなった
2017年8月11日午後1時過ぎ。いたって何事もない、平和な夏の沖縄の午後です。
ただこの日は、たった一つだけ、いつもとは違うことが起きています。
そう。今まさに、沖縄県民が愛してやまない全国高校野球大会の、沖縄代表校・興南高校が、第四試合で、智弁和歌山高校との大事な初戦を迎えています。
誰もいない那覇の町。
いつもはどんな時間であっても車の往来が激しく、くそ熱い中でも、日傘片手にとことこと歩いてくるおばぁたちの姿が、少なくとも数名は見られるこの道路。立ち止まってしばらく待っていても、ひとっこ一人、歩いちゃ来ない…。
これが、沖縄代表が甲子園で試合をする日でなければ、あり得ない光景。有名なかき氷屋の前ですら、誰もいない異常事態。
でも、今日だからこそ、沖縄県民にしてみれば、当たり前なのがこの光景。なにしろ、テレビの前で、興南高校の試合を観戦していないこの私こそ、県民からしてみればおかしなことなのです。
でも!私だって、沖縄に長く住む者の一人。
歩きながらも、耳にはしっかりとラジオのイヤホンが刺さっているのです。人一人歩かないこの那覇の街並みですが、街のあちらこちらから、大音量のテレビやラジオの中継が聞こえてきます。
写真では、音が一切聞こえてこないのが残念でなりませんが、弁当屋の厨房の中からも、作業中の工事現場の中からも、はたまた、音量マックスでなぜかワンセグを見ているおじいたちも、みんな、興南高校対智弁和歌山との一戦を見守っています。
いつもは、観光客と一緒に、夕方の買い物ついでに、クーラーが効いたアーケードの中を散歩するオバァたちの姿が混じってごった返している平和通りも、なんとなく人が少ない気がします。
これも、沖縄の夏の風物詩!高校野球あるあるです。
突如現る!高校野球名物・即席応援会場
3回裏の攻撃で、一挙に6点取った興南高校に安心しきっていた私。
ラジオのイヤホンを外し、しばらく作業に没頭しているうちに、午後3時半を過ぎてしまったため、慌ててイヤホンを付けると、何やら戦況がおかしくなっている様子!
あわてて、近くの即席応援会場へダッシュ!
沖縄のオジーオバーが、そろって観覧席の最前列で、身を乗り出して応援しています。
ちなみにこの即席観覧席の両サイドには、商店が並んでおり、店の店員たちも、この暑い中、通りに出てきて、固唾をのんでテレビ中継を見ています。
モニターの下に浸けられた即席のスコアボードを見ると、すでに試合は7回まで進み、いつの間にか、智弁和歌山が興南を逆転!
どうりで、さっきから「ワー‼」とか「ヤッター‼」とかいう声が聞こえずに、中継のボリュームだけが大きくなったわけだ…。
さらに、国際通りまで出かけてみると、これまた、普段では考えられない光景が!
みなさん集まってます。
炎天下にもかかわらず、中には日陰にも入らず、無言である方向を見つめています。その視線の先にあるのが、大型モニターに映し出された高校野球中継!
時間を追うごとに、どんどん人が集まっていきます。
チバリヨ―!興南!
そして短い2017年沖縄の夏は終わりを告げた
急いで自宅に帰って、テレビを点けなければ…と早歩きで帰る道すがら、「はぁ~、夏が終わった…」とため息を漏らす女性の声が聞こえてきました。
まさか!
そう思って近寄った青果店のテレビモニターには、悲しくも、智弁和歌山高校の校歌が流れ始めていました。
2017年、甲子園球場での興南球児たちの夏は、残念ながら初戦敗退となってしまいました。
そして、それとともに、2017年ウチナンチュの長くて短かった夏も、終わりを告げました。
でも!どんなことがあっても、オリオンビール片手に盛り上がるのがウチナンチュ!
この後しばらくすると、自宅の周囲にある居酒屋から、元気なウチナンチュ達の、興南ナインたちをねぎらう乾杯の声が聞こえてきました!
ありがとう!興南!そして、ちょっと短い夏よ!また来年も、熱戦とともに戻ってきてくれ!