沖縄県那覇市にある識名霊園は、ウチナンチュが想像していた以上の面白さがあります。ですから、識名園に行っても、ただひたすら庭や池を眺めるだけだと思っていたあなたは、失礼ですが、思いっきり損していますよ!
前回までの識名園
琉球王国の王の別宅として、世界遺産に登録されている識名園。実は、別名「南苑」とも呼ばれ、かつては、首里崎山町の「首里キリスト教会」周辺にあった「東苑」とともに、王族の別宅として使用されていました。識名園を一歩入ると、そこは、和風の日本庭園を思わせるような、ゆったりとした風景!
別宅へと続く小道は、石できれいに敷き詰められ、緑と風、そして湧水が湧く井戸など、和の雰囲気を存分に味わうことが出来る景色が続いています。
ついに見えてきた!あれが王様の別宅だ!
井戸から歩くこと5分!ついに、目的の別宅までたどり着きました!
残念ながら、現在見ることが出来る建物は、実際に琉球王国の王様が使っていたものとは違います。
ちなみに、オリジナルの識名園は、第2次世界大戦の沖縄戦によって破壊されています。その後、総事業費7億8千万円をかけて復元整備されたものが、現在公開されている識名園です。
何しろ、やたらに庭が広い!芝生だけでも、これだけあります。
全体を見てみると、さらにその広さが分かります。平屋づくりなのですが、堂々としたたたずまいに、「さすが王様」といった風格を感じます。
ちなみに、写真手前に移っているのも、敷地内にある池。王様は、ここに船を浮かべて、のんびりと時間を過ごすこともあったそうですよ!
王様の家に、お邪魔しま~す!
いよいよ、お宅訪問の時間です。
まず、王様のお宅を見る前に、昔の家の間取りについておさらいしておきましょう。
伝統的な沖縄の間取り
「八重山民族園」にある「森田邸」は、1900年に建てられた旧士族の邸宅です。家の間取りは、沖縄の伝統的な間取りとなっています。
玄関がある方が「表座」で、その裏側を「裏座」といいます。それぞれ、「一番座(いちばんじゃー)」「二番座(にばんじゃー)」「三番座(さんばんじゃ)」があり、仏壇には「トートーメー」が安置されます。沖縄の台所は、基本的に土間仕様です。
いよいよ、お宅の中にお邪魔します!
待ちに待った、王様の別宅へお宅訪問です!
手が込んでますね~!いい仕事してます!
しかも、ここには、先ほどの建物には見られなかった、あるものがきちんとつけられています。
これ、実は首里城内にある「書院・鎖之間」にもあります。釘を隠すための飾りといわれていますが、これも、王族が使用する部屋ということを表しています。
ちなみに、首里城にある「書院・鎖之間」は、お茶と琉球菓子をいただける喫茶ルームがあります。識名園では、建物は見学するだけですが、首里城に行けば、もれなく王様気分で「お茶」が出来ます!
これは、廊下の屋根の部分です台風の被害が多い沖縄ですが、これだけしっかりと木を組んでいるから、目の前に池が広がっていても大丈夫だったのですね!
奥様!いよいよ台所です!
長らくお待たせしました!奥様にとって、日々の生活の中で大切な「御台所」。もちろん、こちらもしっかりとご紹介していきますよ!
窯は、大型のものが2つついてます。こちらのお宅は、まだオール電化仕様ではありませんので、ぜひ、薪を使って煮炊きしてください。
対面式キッチンとまではいきませんが、お部屋の中の雰囲気を感じることが出来る間取りです。かなり広めのキッチンですし、出来上がった食事はすぐに食卓へ!もちろん、お客様が大勢いらっしゃっても大丈夫なように、こんなものまで完備しています。
こちらは、『御茶湯御酒羹所(おちゃゆおさけあつものところ)』と申しまして、とっても便利な機能があるんです。せっかくいらっしゃったお客様へのおもてなしなのですから、お茶やお酒は温かい状態のままでお出しするのがマナーですよね?ですから、こちらでは炭火をつかって、冷めないように温めておく場所なのです。
もちろん、すぐにお出しすることが出来るよう、「室内」に設置させていただいています!お買い得でしょ?奥様!
中庭完備なんですよ!
表にどどーんと構えている庭だけが、識名園の庭ではありません。実は、室内にいても緑を感じることが出来るように、ちょっとした中庭があるんです。ですから、縁側に座っていただいて、「ちょっと日向ぼっこ」なんてのもできますよ。
とまあ、ここまでがお宅訪問ということなのですが、別宅とはいえ、さすが王族の持ち物という感じがしますよね?ただし、識名園の凄さは、まだあるのです!
近くで見るとビックリするけど、遠くから見たらキレイな池
別宅の目の前には、中国式庭園が広がっています。
奥に見える橋は、かなりの急こう配!遠くから見ると、その姿の美しさが際立ちますが、もしもこの橋を「一日に十往復しろ!」といわれたら、速攻逃げます。そのくらい、傾斜がきつい階段です。
本当に、どうしてこの角度で作ったんだろう…。謎です。ちなみに、池には「六角堂」と呼ばれる建物があります。
右奥にある建物が、六角堂です。池の真ん中にせり出すようにして作られています。残念ですが、識名園の六角堂は、中に入ることが出来ません。ただし、似たような建物が、那覇市にある「福州園」にあります。こちらも池の中に設置された建物ですが、福州園では、中のベンチに腰掛けてくつろぐことが出来ます。
識名園は、ウチナンチュにとっても発見が多い場所だった!
特別出かけるほどではないと思われがちですが、中に入ってみると驚きの連続!ゆったりとした和風の庭園が広がっていたり、湧水に触れることが出来るなど、ウチナンチュにとっても意外な発見が多いのが識名園でした!