2021年6月に閉鎖を予定している今帰仁村の会員制ゴルフクラブ・嵐山ゴルフ場ですが、その跡地には体験型のテーマパークが建設される計画が立てられています。2025年の開業を目指す嵐山ゴルフ場跡地のテーマパークとは?
県内外の企業5社が建設計画に参加
嵐山ゴルフ場は、今帰仁村の呉我山にあります。近くには世界遺産に登録されている今帰仁城跡があり、透明度の高い天然ビーチと絶景が魅力の今帰仁村での開業を目指す新たなテーマパークは、自然を五感で楽しめる体験型テーマパークになる予定です。
予定通り開業すれば本島北部地域に初めてのテーマパークが完成することになるため、開業計画のプレスリリースが発表された際には地元新聞でも大きく取り上げられました。さらに開業計画に参加しているのが、オリオンビールなどの県内企業だけでなく、大阪の近鉄グループホールディングスや東京のマーケティング会社「刀」など、県内外の5企業が参加している点が県内にある既存のテーマパークと大きく違います。
キーワードは「エキゾチックな外国気分」
2020年現時点では、どのような施設がテーマパーク内に建設されるのかはっきり分かっていません。ただキーワードとなるのは、ヤンバルと呼ばれる本島北部の自然にあるようです。その理由にあるのが、マーケティング会社「刀」の森岡代表がメディアに語ったあるキーワードです。
森岡代表のコメントによると、新たに建設するテーマパークは「エキゾチックな外国気分が五感で体験できるテーマパーク」になるといいます。たしかにヤンバルの森は自然が豊かな沖縄の中でも珍しい亜熱帯の森です。そのため手つかずの森に足を踏み入れると、まるで亜熱帯のジャングルを体験しているような気分になります。そんなヤンバルの森を森岡代表のイメージ通りに整備したとすれば、これまでの沖縄のテーマパークとは異なる魅力的な観光スポットになることでしょう。
山を楽しめる施設を増やす?
マーケティング企業「刀」の森岡代表は、テーマパーク計画のヒントとなるもう1つのコメントをだしています。実は森岡代表はこれまでもさまざまなメディアで沖縄の観光についてコメントしていますが、過去のコメントを分析してみると沖縄の観光に大きな可能性を感じているものの、観光コンテンツが足りないことも強く感じているようです。
つまり自然が楽しめる沖縄とはいえ、「海は海」「山は山」というようにそれぞれが分離して存在していると指摘しているのです。
さらに現状のように海と山が分離している状態では長期滞在を見込みにくいと考えているため、「海も山も一緒に楽しめる施設がなければ活性しない」とも指摘しています。
ちなみに新たにテーマパークを建設しようとしている今帰仁村は美しい海が身近に感じられますが、海と山を一緒に楽しむ施設はありません。そのため山を楽しめる施設を増やせば、新たな観光スポットとして多くの観光客の誘致が期待できると予想しているのでしょう。
富裕層のインバウンドをターゲットにしているが…
新たなテーマパーク建設計画は、中国や韓国を中心とした富裕層のインバウンドが好調だった2018年に始まりました。また建設計画が本格化してきた2019年8月の時点も、インバウンドに陰りは見られませんでした。それどころか那覇空港の第2滑走路の開通などもあり、さらにアジア圏の富裕層の来沖数が伸びると予想されていたのです。
ところが2020年に入り新型コロナウィルスの感染拡大が世界規模に発展すると、それまで好調だった沖縄観光にも大きな陰りが見えてきました。東京2020オリンピックも1年延期が決まり、オリンピック期間中に来沖を見込んでいた海外からの観光客も絶望的です。
とはいえすでにテーマパーク2025年に開業を予定しているので、2021年のオリンピック開催までにインバウンドによる観光業へのダメージが回復すれば、計画通りに開業できるはずです。
開業したら北部地域は大きく変わる
2020年時点では計画がこのまま順調に進むか、状況を静かに見守るしかありません。ただし計画通りに開業すれば、本島北部地域の環境は大きく変わります。本部町にある美ら海水族館は北部地域の人気観光スポットですが、北部地域への長期滞在を促す起爆剤にはなりません。さらに多くの場合日帰りで訪れるため、北部地域での滞在時間は平均半日です。
そこに長期滞在の起爆となる新テーマパークが開業すれば、北部地域での観光客の滞在時間は飛躍的に伸びますし、新しい観光施設や体験ツアー、飲食店なども増え、それぞれが連動することで魅力あふれる観光地に変わります。
もちろん観光客の滞在時間が増えれば宿泊施設も増えますし、そこに継続的な雇用も生まれて地域が活性化します。そうすればスーパーや飲食店など生活に必要な施設が増えるので、長期滞在がしやすい環境が整います。さらに長期滞在から沖縄移住へとつながり、今帰仁村周辺の人口増加につながるかもしれません。
新しいテーマパークの開業を今は静かに見守ろう
全てが計画通りに進んだとしても、嵐山ゴルフ場跡地にテーマパークが完成するのは5年後の2025年です。ただし計画段階の現時点で問題が山積しているため、今後計画に変更が出るかもしれません。それでもかつて北部に誘致が計画されていたUSJの二の舞にならないよう、沖縄県民として今は静かに計画を見守るのが1番かもしれません。