観光スポットとして有名な残波岬の近くにある読谷村の宇座イノー。ここには干潮の時だけ姿を見せる石切場跡があります。まるで海中遺跡のような石切場跡は、静かに海を眺めるのにおすすめの穴場スポットです。
干潮の時だけ姿を現す不思議な石切場跡
干潮の時だけ姿を現す石切場跡は、残波岬に向かう途中の宇座集落にある宇座イノーで見ることができます。イノーとはリーフ(サンゴで囲まれた天然の防波堤)で囲まれた浅い海のことで、海藻や小魚、貝などが集まる豊かな海です。そのため沖縄では昔からイノーのことを「海の畑」と呼んでいます。
そんな宇座イノーにある石切場跡は、「宇座石」と呼ばれる良質な石材が採れる場所でした。宇座イノーの宇座石が盛んに採掘・販売されていたのは、大正時代末期から昭和時代初めと言われています。当時は波照間島の石材が多く流通していたのですが、墓石だけでなく畜舎や石垣など建築石材として幅広く利用が出来る良質な宇座石は沖縄本島内でも人気が高く、那覇や宜野湾、北谷、具志川方面へも出荷されたといいます。
とはいえ宇座石があるのは海の中。しかも潮が引かなければ石は切り出せません。そのため石職人たちは潮が引き始めるとイシアナと呼ばれる採掘場所に集まり、バンジョーガニ(金尺)、ユーチ(石切斧)、チーシ(ハンマー)、チンチョー(石を挟むハサミ)など採掘用の道具を使って石を切り出します。
さらに切り出した石は満潮時の浮力を使って馬車に積み込みます。こうすることによって海の中にある宇座石を効率よく切り出し、遠くまで効率よく運搬することができたわけです。
このように宇座の石切場は良質な石材が採れるだけでなく効率よく石を運搬する方法も確立されていたため、沖縄本島で最大規模の石切場として栄えました。
石切場跡がある海岸にはのどかな風景が広がっている
宇座イノーは、穴場の天然ビーチでもある宇座海岸から車で約3分の場所にあります。宇座海岸は穴場とはいえ観光スポットである残波岬に近いこともあり、年々訪れる観光客の数も増えています。ところが宇座イノーは宇座集落の農道の途中にあるため、地元でもあまり知られていない超穴場スポット!
もちろん海の透明度は宇座海岸と同じでとてもキレイです。さらにリーフに囲まれているイノーですので波も穏やかでとても静かです。石切場のあたりはごつごつとした岩場が続いていますが、砂地もあるので磯遊びをするにはピッタリです。
さらにおすすめなのが、こののんびりとした景色!特に晴れた日には青い海とエメラルドグリーンの海が美しく、ぼんやりと景色を眺めるだけでも癒されます。ちなみに地元では「夕陽が美しいスポット」として知られています。
宇座の石切場跡は時間を忘れて沖縄の景色を楽しめる場所
宇座の石切場跡には、特別なものは何もありません。そのかわり「何もしない時間」を楽しむことができます。青く穏やかな海と海底遺跡のような石切場跡。人気の観光スポット・残波岬を訪れるなら、宇座の石切場跡に立ち寄って贅沢な癒しの時間を過ごしてみませんか?