沖縄には世界遺産に登録されている有名な城跡以外にも、たくさんの城跡があります。中でも本島中部うるま市にある伊波城跡は、他の城跡とは違う神秘的な雰囲気が魅力的の穴場のスポットです。

入口に立つだけでも厳かな気持ちになる伊波城跡

伊波城は、うるま市一帯を見下ろすことが出来る高台に建てられた城です。標高は87メートルあり、眺望の素晴らしい場所でもあります。城の周りは自然石をほぼそのままの形で積み上げるという「野面積」と技法によってつくられた石垣があり、石垣に沿って城の南側入口まで歩いていくと、いかにも歴史を感じさせる鳥居が目の前に現れます。

すでにこの鳥居を見ただけでも、この先が聖域であることを感じさせられる伊波城跡。昔は伊波城跡周辺に住む小学生たちによる写生大会が行われたこともあったそうです。

沖縄県指定史跡とされている伊波城跡ですが、この遺跡が本格的に発掘照査されたのが平成元年だったということもあり、それまでは地元に住む人々の信仰の場所として大切にされてきた場所だといいます。急な石段を少しずつ登っていくと、その意味が少しずつ分かってきます。

城内には数か所の拝所が今も存在している

鳥居をくぐり急な石段を少しずつ登っていくと、その先には見晴らしの良い広場のようになっています。少しずつ中を歩いてみると、所々に「拝所」と呼ばれる場所があります。入口に城内の案内地図があったのでそれを確認してみると、どうやら全部で3ヶ所の拝所があることが分かります。

拝所は東側入口周辺に2か所あり、南側入り口から登ってきて最初にたどり着く広場のような場所の中央部分に1か所あります。沖縄では拝所と呼ばれる場所は、神さまへの祈りの場であるとともに聖なる場所でもあるといわれているため、カメラを向けることは差し控えさせていただきました。でも拝所の手前に腰を落とし静かに手を合わせていると、なんだかパワーをもらったような気持ちになります。

森を聖域と考えていた沖縄の昔を感じさせるムイグスクノタキ

城内には「ムイグスクノタキ（森城乃嶽）と呼ばれる場所があります。沖縄では日本の神道と同じように、山や森など自然の中にも神さまが宿っていると考えられています。中でも「ムイ（もり）」と呼ばれる場所は聖域と呼ばれ、その中に入ることが出来るのは神官と呼ばれるごく一部の人物であったとも言われています。

実はこうしたムイは決して珍しいものではなく、首里城にある「首里森御嶽（スイムイウタキ）もその一つです。首里森御嶽というのは首里王朝時代の最高神官であった聞得大君に使える3人の神女たちによって、琉球王国の安寧を祈願していたといわれる聖なる場所です。ちなみに首里城が首里の高台に建設されたのも、首里森御嶽があったからだといわれています。こうした歴史を考えてみると、伊波城は森城之嶽があったからこの場所に建てたのかもしれませんね。

城内の至る所がパワースポットになっている

それほど大きな城ではなかった伊波城内では、敷地内の至る所にパワースポットと呼ばれる場所があります。スピリチュアルなこととは無縁の私ですが、そんな私でもなんとなくこの場所にいると気持ちが穏やかになるような気がします。

なかでも城の最も奥にある切り立った断崖の先から見ることが出来る景色は絶景です。あいにくこの日は天気に恵まれなかったのですが、それでもうるま市街を一望できるこの場所からの景色に思わずカメラを向けてしまいました。

東側入口からだと比較的登りやすい伊波城跡

南側の入口から中に入るには、急な石段を登っていかなければいけません。ところが伊波城跡には南側入り口とは別に、東側入口もあります。こちらは整備されたという印象はあまりないのですが、緩やかな坂道になっているため比較的誰でも登りやすい感じがします。

南側入り口のように立派な看板などがないため初めて訪れる場合はちょっと見つけにくいかもしれませんが、地元住民がこまめに手入れをしているため特に危険な道ではありません。体力に自信がない人や車いすなどでの見学の場合は、ぜひ東側入口の方からどうぞ。

• 住所：うるま市石川伊波
• 見学時間：自由見学

※城跡内はライトなどの設置はありません。夜間に訪れる場合は、懐中電灯などを持参の上、足元に気を付けて見学することをお薦めします。