スパムに代表されるポーク缶は沖縄の定番食材です。沖縄旅行の土産として購入する方も多いようですが、本土では普段使いの食材としてはまだまだ馴染みが少ないかもしれません。
今回は40年以上もポーク缶を食してきたクイナ先生が、その歴史から使い方までご紹介します。
実はごちそうだった?ポーク缶
ハイサイ(こんにちは)、クイナ先生です!
だいぶさかのぼりますが、17年ほど前、NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」放映をきっかけに沖縄ブームが到来すると、沖縄の食材のひとつとしてポーク缶の存在が世間に広まりました。
本土の方はこのポーク缶を「スパム」として認知している方も多いようですが、スパムは1926年に世界で初めて豚もも肉を使った缶詰を発売したホーメル社の商標名(商品の名前)で、一般的にはポークランチョンミートと言い、沖縄ではポーク缶、もしくはポークの名称で親しまれています。(以降はポークと呼びます)
そもそもポークは豚、ランチョンミートとはランチの類義語ですが、ランチョンは「形式ばったランチ」、「上品な昼食」など、ごちそう的なニュアンスを含んでいます。
この呼び名は後述するポーク缶の歴史と関係しているかもしれません。
実は迷惑メールのスパムの語源だった!
スパムと聞いて、多くの方がポーク缶より、ネット上の迷惑メール「スパム」を想像されるでしょう。
とんでもない勘違いで、製造元のホーメル社にとって、なんとも迷惑な話だと同情したくなりますが、実は迷惑メールのスパムはこの缶詰のスパムから来ているのをご存知でしょうか。
1970年にイギリスのコメディアングループ、モンティ・パイソンの番組「空飛ぶモンティ・パイソン」第2シリーズ第12話の中で放映された中身が次のとおりである。
何故かヴァイキングのたくさんいる大衆食堂にバン夫妻(エリック・アイドル、グレアム・チャップマン)が天井から吊り降ろされてやってきて、厚化粧のウェイトレス(テリー・ジョーンズ)にメニューを尋ねる。ウェイトレスはメニューを読み上げるが、その中は「豚肉と煮豆とスパム」「スパムと卵とソーセージとスパム」「スパムとスパムとスパムとスパムと煮豆とスパムとスパムと…」などと「スパム」ばかり入っている。スパム嫌いのバン夫人(チャップマン)は逆上するが、ウェイトレスはスパム入りのメニューしかないと言い張る。「スパム」が連発されるうちに、周りにいたヴァイキングたちが「スパム、スパム、スパム……」と合唱を始め、食堂はわけのわからない状態になる
参照:ウィキペディア
このように、相手の迷惑を考えずに執拗に何度も繰り返し宣伝するというコメディから迷惑行為のことをスパムと呼ぶようになったと言われています。
その動画はこちらから
沖縄県の消費量は世界第3位
沖縄県民の一人当たりのポーク消費量はアメリカとイギリスに次いで世界第3位と言われており、日本に輸入される9割が沖縄で消費されているようです。
確かに、県内のどこのスーパーでもポークは大量陳列されており、しかもその種類は10種類以上、ケース販売も珍しくはありません。
このように沖縄県民の食生活にすっかり溶け込んでいるポーク缶ですが、沖縄における歴史はそう古くありません。
ポーク缶の歴史
沖縄県民がポークを食するきっかけになったのは、約70年前の太平洋戦争終了後、まだ米軍統治下にあった時代でした。
そもそもポークは米軍兵士の戦時中における携帯食糧として活用されていたものでした。
沖縄県は敗戦によって人命と同時に多くの自然や食糧が失われたわけですが、かつて琉球と呼ばれる時代から、沖縄の食文化にとって「豚」は切っても切り離せない食材でした。
戦前は10万頭あまり飼われていたといわれる豚は戦後1000~2000頭まで減ってしまい、戦後の食糧難で苦しんだ県民へアメリカからの配給物資のひとつとしてポークが配られました。
もともと豚肉が食の中心にあった沖縄県民にとってはすんなり受け入れられ、また「チャンプルー文化(ごちゃまぜ」と言われる「うちなんちゅ(沖縄県民)」の気質やバイタリティとも相まって、現在に至る多くのポークを使ったメニューを生み出してきたわけです。
ポークの原料は豚肉だけではない?
ポークという名前からして豚の缶詰であることは想像できますが、基本的な原料は「豚肉」、「食塩」、「でん粉」、「保存料などの添加物」でできています。
数あるポークの中には、豚肉以外に、牛肉、鶏肉が配合されている商品もありますのでパッケージ(缶)に印字されている一括表示を見て、お好みに応じて選ぶことが出来ます。
ここで「ん?添加物?」と気になったあなたの為に、商品の安全性についても少し触れたいと思います。
ポークって安全なの?
ポークはそもそも長期保存できる食品として開発されており、賞味期限は約3年もあります。
製造方法は細かく刻んだ豚肉とラード(豚脂)、調味料などを混ぜ合わせて缶につめて固め、最後に加熱殺菌して出来上がります。
加熱殺菌はしているものの、食中毒の原因となる「ボツリヌス菌」の繁殖を防止するために、亜硝酸ナトリウムや、安定剤としてリン酸塩が使用されています。
亜硝酸ナトリウムは発色剤としての役割と上記のような細菌の繁殖防止効果を持っていますが、過去には発がん性があると警戒されていました。
しかしながら最新の見識では、そもそも人体で生成される物質のひとつで、人体被害を引き起こすリスクは高くないと評価されています。
また近年では製造加工技術の向上により、添加物を使用しないポークもありますので添加物が心配な方は、後述するコープ(生協)のポークを購入すると良いでしょう。
ポークの食べ方
前述したように加熱殺菌により、調理済みなので生でも食べられますが、沖縄ではほとんどが焼く、炒める、煮るなどの2次調理をしています。
一般的な食品に例えると、ハムやソーセージのように、加熱した方がうまみが増して美味しく食べられます。
人気のポーク缶ベスト3
最近では全国の一部スーパーでもポークを手に入れることが出来るようになりましたが、沖縄観光みやげとして、また自家消費用として購入するに当たり、どれを選んだらいいか迷いますよね。
そこで、沖縄事情に詳しいクイナ先生が沖縄で支持の高い商品をいくつか紹介します。
2大商品はスパムとチューリップ
今から紹介する3つのポークは沖縄県内スーパーではほぼお目にかかることができ、県民に親しまれている商品です。
SPAМ(スパム)
まずひとつ目が国内で最も認知されているポークである「スパム」です。
チューリップ
2つ目に紹介するポークは、実は沖縄県内で一番支持があるチューリップです。
ミッドランド
県産のポーク缶もあります!
ポークは基本的に輸入品なのですが、県産豚肉を使用したポークも県内で製造しています。
輸入品は抵抗があるという方にはピッタリです。
わしたポーク
わしたポークは県外でもショップ展開している「わしたショップ」のプライベートブランド、PB商品です。
上記の3商品と異なる点は沖縄県産の豚肉を使用し、鶏肉を配合している点です。
沖縄でしか買えないレア品はコレ!
こちらのポークはコープおきなわ(生協)のPB商品として、コープのお店で販売されている商品です。
生協といえば、こだわった商品を取り扱っているイメージですが、全国の生協でも沖縄でしか購入できないので、こだわりのある方はコープおきなわのお店を覗いてみてはいかがでしょう。県外のスーパーでは手に入れる事は出来ませんが、通販では購入可能です。通販で購入する場合は12缶入りからしか販売されていないようです。
開け方がおもしろい!
ポーク缶はそもそもが軍事物資としての役割も担っていたため、缶の形状も特殊なつくりになっています。
通常の缶詰の多くは丸型ですが、ポークは長方形型になっています。これは戦闘員が持ち運ぶ際、スリムな形状にすることで持ち運び時に邪魔にならないよう改良されたと言われており、その名残が今でも残っています。
また、面白いのは缶の開け方です。
最近のポーク缶は開けやすいようにプルタブ式(つまみを上に引いて空けるタイプ)ですが、カギねじ式のフタの商品は半数を占めます。(写真を参照)
こちらも戦時中に缶切り不要でも開けられるように工夫された技術のなごりです。
ポークを使った沖縄料理オールスター
戦後70年で沖縄県の食文化にすっかり定着したポークは、沖縄県の庶民料理の中に溶け込み、数多くのメニューに活用されています。
その代表はみなさんもご存じの炒め料理のチャンプルーです。ゴーヤーチャンプルー、豆腐チャンプルー、ふーチャンプルー、チャンプルーの意味はごちゃまぜという意味で、野菜や肉、その他の素材を島豆腐と炒めた物を○○チャンプルーと呼びます。
チャンプルーにはポークを必ず使うというルールはありませんが、日常的には豚肉の感覚で使用されることが多いですね。
それ以外の料理への使用例も紹介しましょう。
ポーク玉子
名前の通り、ポークとたまご焼きがメインの定食で、あとはご飯とお味噌汁とサラダくらいのシンプルなものです。一般家庭の朝ごはんでも良く食されますが、多くは沖縄県内の食堂で定番のメニューになっています。
サンドイッチ
ハムの代わりとしてサンドイッチで使用することも多くあります。厚みを調整できるので、ボリュームたっぷりのサンドイッチが作れます。
ナーベーラーンブシー
名前から想像してもまったく何の料理かわかりませんよね(笑)
ナーベーラーは「へちま」、ンブシーは「煮物」のことで、へちまのみそ煮を意味します。
本土ではへちまは垢すりのイメージがありますが、沖縄では料理の材料として人気の食材です。
ナーベーラーの味噌汁
こちらもへちまをつかった味噌汁です。具材はへちま、ポーク、豆腐のシンプルな味噌汁です。
ポークはお味噌汁に入れても美味しいですよ。
ポーク玉子おにぎり
沖縄観光にいらした方なら、コンビニのおにぎりコーナーでもみかけたことがあるのではないでしょうか。
ポーク玉子おにぎりは沖縄の定番のおにぎりです。
もともとはハワイのスパムむすび起源のようで、ハワイに住む沖縄移民の方が沖縄へ伝え、沖縄県民がごはんにポークを海苔で巻いたものに玉子を加えて進化させたと言われています。
その他にもカレーやシチューなどに豚肉の代わりに入れても美味しいですし、とにかくどんな量にとも相性がいいので、使い勝手が良く、各家庭でもアレンジメニューがたくさんあります。
ポークたまごおにぎりの作り方
ご紹介してきたメニューの中から、おみやげで購入された際でもおうちにある素材だけでできる「ポーク玉子おにぎり」の作り方を紹介します。
材料
- ポーク缶
- ご飯
- のり
- たまご
- ケチャップ
作り方
- のりにご飯をうすめに敷きます。(巻きずしを作るイメージです。)真ん中に隙間を作るのがポイントです。
- ポークは5㎜程度にスライスし、表面に軽くごげめがつく程度に両面火を通します。
- 玉子焼きを作り、ポークと同じ幅でカットします。
- のりにご飯を敷いたものにポーク、玉子焼きを載せ、お好みでケチャップを軽くかけます。
- 2つ折りにしてカットしたら出来上がります。
お好みによって野菜などの具材を挟んでも美味しいですが、まずはシンプルにポーク玉子を作って食べてみてください。
沖縄観光のお土産にポークを!
いかがだったでしょうか。
たかがポーク缶、歴史やスパムの語源などもセットにすれば、それはもう価値ある観光土産(土産話にも)になりそうですね(笑)。
あと、ポーク缶の多くは輸入品ですが、沖縄は古くから独自の流通経路を持っているので本土より安価で購入できます。
本土だと1缶400~500円前後しますが、沖縄だと300円前後で購入できますので、是非ご利用してご自宅でポーク玉子おにぎり作りにチャレンジしてください。
以上、クイナ先生でした!